エストニアとリモートワークについて私が知っている二、三の事柄

エストニアと開発をしていたら、突如オフィスを失い、リモートワークになったCTOの日々のメモです。

「値札をつけてくれ、値札を」

すいません。ちょっと詩を書いてしまいました。



最近の日記の脈絡で・・・レーニンマヤコフスキーが乗り移ったのかもしれません。いやいや、それはあまりにも傲慢でございますね。



これだって、日々の戯れ言。To be revised でございます。







「値札をつけてくれ、値札を」   藤田壱九



今や、笑顔ひとつにも値段がある

ましてや

優しさや喜びをお金で買うことなど

至極簡単なことだ



値札をつけてくれ、値札を



僕の家の家賃は13万円

携帯電話代は月に9000円

終電を乗り過ごして乗るタクシーは3980円



値札をつけてくれ、値札を



僕の体にももちろん値段がある



結婚した時に

僕が一番安堵したのは

自分の生命保険の受け取り人名義を

妻の名前に変えた時だ



僕の命の値段は数千万円



値札をつけてくれ、値札を





愛や憎しみにももちろん値段がある



無償の愛などまっぴらだ

いつか

その愛に対して

対価を払わなければいけないことを

僕たちは

みんな

知っている





値札をつけてくれ、全てに



遠い国の大統領の嘘にも値段がついている

砂漠の国の飢えた子供たちが握りしめている

消えてしまいそうな真実にも値段はある



宇宙の彼方で輝く超新星には値段のつけようもないが

かといって

世界中の人々が国家に税金を払わなければ

僕たちがその超新星を見ることもなかっただろう





スペースシャトルにも

もちろん

値段がある



輝く月の一平方メートルにも

値段がついている





値札をつけてくれ、値札を



彼に優しくするのはやめてくれ

あなたの尊い優しさにすら

いつか誰かが値札をつけることを

僕たちは

暗黙のうちに

知っている





値札をつけてくれ、全てに



この世の中にただのものなんてどこにもないさ



熱い夏の日の喉の渇きを癒す一杯の水にだって値段がある



秋の日にあなたの頬を流れる

一筋の涙にだって値段がある



なければ僕がつけてやる

値札を

すべてのものに





もし、すべてのものに値段がついていなければ

僕たちは

その恩恵に

ただ

押し潰されることだろう





値札をつけてくれ、値札を



僕たちの手に



僕たちの足に



僕たちの優しさに



僕たちの寂しさに



君の乳房に



僕のペニスに



父に



母に



まだ見ぬ息子や娘たちに





値札をつけてくれ



誰か





もし、僕たちが値札をつけなければ



きっといつの日か



僕たちの<たましい>にも値段がつくことだろう





それとも



もう遅すぎるのか





小さい手で



生まれてはじめて50円玉を握りしめ



アイスクリームを買った



あの



喜びだけは



永遠に忘れることができないまま



(To be revised)



2005.4.7