エストニアとリモートワークについて私が知っている二、三の事柄

エストニアと開発をしていたら、突如オフィスを失い、リモートワークになったCTOの日々のメモです。

ほとんど確実に神が存在しない理由

master20102007-12-29


数学者の無神論―神は本当にいるのか

数学者の無神論―神は本当にいるのか

から調子づいて、

であるを読み進めている。

ご存知、「利己的遺伝子」で有名なリチャード・ドーキンスの本であるが、熱い。

アメリカで「無神論」がいかに差別的に叩かれるか(あるいは抑圧的に批判されるか)を実感することができる。

ちなみに、さきに紹介した「数学者の無神論」は、このドーキンスの本を参照していると見られ、かつ、それをコンパクトにまとめている。
人間性定理」に関する解釈(立場)は正反対だが(ドーキンス人間性定理は「科学」のものだと考え、「数学者の無神論」では「宗教の残滓」だと考えている)、要旨は一致している。

「神はちょっとありえない」である。

ドーキンスの本は、今、第4章の「ほとんど確実に神が存在しない理由」まで読んだ。

この末尾が熱い。引用しておく。


この章には、本書の中心的な議論が含まれており、したがって、繰り返しに聞こえるという危険を冒して、以下の六点に要点をまとめておきたいと思う。

1 何世紀にもわたって、人間の知性にとっての最大の難事だったのが、この宇宙がいかにして、複雑で、一見設計(デザイン)されたとしか思えない、ありえない姿をもつに至ったかを説明することである。

2 設計(デザイン)されたかのような姿が生じたのは、実際に設計されたからだ、と考えたくなるのは自然なことである。時計のような人工の工作物の場合、設計者(デザイナー)は実際に知的な技術者である。同じ論理を眼や翼、クモや人間に当てはめるというのは心をそそられる。

3 しかし、そう考えるのは誤りである。なぜなら、設計者(デザイナー)仮説はただちに、その設計者を誰が設計したのかというさらに大きな問題を提起するからである。私たちが手がけようとする問題のすべては、統計学的なありえなさといかに説明するかという難題である。よりありえない何かを仮定するというのは、明らかに答になっていない。私たちに必要なのは「スカイフック」ではなく「クレーン」なのである。なぜなら、クレーンだけが、単純なものから、漸進的かつ説得力のある形で、ほかの手段では到達しえない複雑さに向かって上昇していくという作業をおこなうことができるのである。

4 これまで発見されているなかで、もっとも巧妙で強力なクレーンは、自然淘汰によるダーウィン流の進化である。ダーウィンおよび彼の後継者たちは、目を見張るような統計学的ありえなさと、設計されたようにしか見えない生物が、単純な発端からいかにして、ゆっくりと段階を経ながら進化してきたかを示してきた。生物に見られる設計(デザイン)という錯覚はまさに錯覚でしかないのだと、言っても差し支えないだろう。

5 物理学では、これに匹敵するクレーンはまだ見つかっていない。ある種の多宇宙理論は、原理的には、生物学においてダーウィン主義が果たしているのと同じ説明的な役割を、物理学において果たすことができるかもしれない。この類の説明は、一見したところでは、生物学版のダーウィン主義ほど満足すべきものではない。なぜなら、それは純然たる幸運が果たす役割にかなりの重きを置いているからである。しかし人間原理のおかげで、私たちの限られた直感がなじめるよりもはるかに大きな幸運を仮定してもかまわないことがわかった。

6 物理学においてもっと有効な、生物学におけるダーウィン主義と同じほど強力なクレーンが生まれてくる望みを捨てるべきではない。しかし、たとえ、生物学版クレーンに匹敵するほど強力で満足すべきクレーンが存在しなくとも、現時点で手にしている比較的非力なクレーンが人間原理に助けられるなら、知的な設計者(インテリジェント・デザイナー)という自己矛盾したスカイフック仮説に比べれば、明らかにすぐれている。

もし、この章での議論が受け入れられなければ、宗教の事実上の根拠ー神がいるという仮説ーはもちこたえることができない。神はほぼ間違えなく存在しない。これが本書のこれまでのところの結論である。そうなるとさまざまな疑問が出てくる。たとえ、神が存在しないことを受け入れたとしても、宗教にはそれでも善いところがたくさんあるのではないか?それは人々に善い行いをさせる動機づけを与えるのではないか?いずれにせよ、なぜそんなに目の敵にするのか?もしそれが偽りだとすれば、なぜ世界中のあらゆる文化が宗教をもっているのか?本当だろうが嘘だろうが、宗教は偏在している。だとすれば、それはどこから生まれたのだ?次章で目を向けるのは、この最後の問いである。

「スカイフック」と「クレーン」というのは、盟友、ダニエル・デニットの術語だと思われる。「神の介在」を意味するような「空からの鈎」という感じだろう。それに比べて、「スカイフック」というのは、漸進的なトライ&エラーを意味するような用語である。

そして、次章は「第五章 宗教の起源」である。

(ちなみに貼り付けた画像はセルオートマンである。)